世界映画史
初期映画史(1900年代中期〜1930年ごろ)

K.S. ラヴィクマール監督 1995年作品

この映画は、一時流行したインド映画の人気作品です。
インドは知られざるアジアの一大映画国家であり、1890年代に映画の上映自体が始まり1910年代の初頭にはインドの国産映画がスタートします。
インドの映画は基本的に、欧米と違って日本的な、笑いあり、涙あり、という、ごちゃごちゃとしたスタイルが多く、それ故、インドのカレースパイス「マサラ」にひっかけて、マサラムービーと呼ばれています。
また、特筆すべき点として、この映画の主人公、ムトゥを演ずるラジニカーントは、今までのインド映画の常識を破るヒーローでした。
インド映画はこれまで、「縁故採用」「白い肌」「美男子」が俳優の条件だったのに対し、ラジニカーントは元バス運転手のおじさん、褐色の肌、そのままのおじさん顔という、まさに真逆をいくキャラクターです。
そんな彼が徐々にスターダムを駆け上がり、ブレイクしたのがこの「ムトゥ 踊るマハラジャ」という作品です。
音楽は当時のインドでヒットメーカーとして名高いA・R・ラフマーンが担当。OPからアップテンポでノリノリの音楽が流れ、無人の馬車が颯爽と走る中、突如として現れるムトゥの姿は、まるで70年代の特撮を彷彿とさせる、熱いレトロ魂を感じます。
  この映画は、純粋に「魅せる」のではなく、俳優達の、一歩間違えば三文芝居にしかなり得ないチープさの中で、ひたすら「熱く」ぼくらに映画の面白さを伝えようとしてくれます。
  それこそ、制作費はハリウッドとは比較になり得ません。例えば、カーチェイスのシーンは、なんと数多くの馬車を使った、馬車チェイスシーンとなっています。しかし、カメラワークによって迫力を付け、チープながら熱い演出で、これを見事にエンタテイメントに昇華しています。
  そして、悪役は悪役らしく。間抜けな友達は間抜けな友達らしく、これでもかというステレオタイプが、まるで大阪の吉本新喜劇のようなお約束的展開で繰り広げられます。しかしそこに、国境を越えた何かをきっと感じてもらえる事でしょう。


  続編の「アルナーチャラム 踊るスーパースター」も含めて観れば、面白さは倍増すること請け合いです。是非一度、インド映画に触れてみませんか?

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